図書館でコンピュータを導入する前はどうやって本を探したり案内したか

 現在は図書館のコンピュータ・システムに言葉を入力すると、それらしい本を出してきます。

 

 たいていは、書名に含まれる言葉です。

 

 書名をつけるとき、小説などのフィクションを除けば、テーマをあらわす言葉を入れるのがふつうですので、だいたいの本はひっかかってきます。

 

 しかし、コンピュータ・システムを入れる前はこういうことはできませんでした。書名の途中の言葉から探すということができなかったのです。

 

 以前は、書名目録と著者名目録という2種類の目録を用意するのがふつうでしたので、正確な書名や著者名がわかっていれば、カードで検索できましたが、うろ覚えだと探すのは困難でした。その場合は、分類番号によって案内することが多かったです。当時の職員は分類番号をよく覚えていました。

 

 日本の図書館の分類番号はたいていは、日本十進分類法(NDC)と呼ばれるものに従っています。この分類法は何度も改訂されており、最新は10版ですが、まだ対応していない図書館がほとんどで9版を使っているところが多いと思います。高知県立図書館・高知市民図書館も9版です。

 

 日本十進分類法は文学などのフィクションを除き、基本的にはテーマ(主題)による分類です。ただし、この場合の主題はどちらかというと学問的分類なので、対象(オブジェクト)が同じでも、学問的には違ったテーマ(主題)で扱われる場合には、分類が分かれます。

 

 たとえば、「自動車」でも、実際に自動車を製造するとなると「自動車工学」ですが、「自動車交通」だと「陸運」に分類されます。こういうところが、少しややこしい感じがしますが、だいたい知っておくと利用するうえでも便利です。

 

 十進分類法とは、最初に大きく10のテーマに分け、さらに、それぞれのテーマを10に分け、さらに、そのまたそれぞれを10に分け、と進んでいくので、「10進」と呼んでいます。

 

 最初の一番大きい10テーマは次のとおりです。

 

0 総記(総合的なもの、ほかにあてはまらないもの)

1 哲学・思想・宗教・心理学

2 歴史・地理

3 社会科学・民俗学・民族学・人類学・軍事

4 自然科学・医学

5 工学・技術・家事

6 産業(農林漁業・商業・サービス業)

7 芸術・音楽・スポーツ・ゲーム・娯楽・芸事(諸芸)

8 語学

9 文学

 

 わかりにくいのは、民俗学・民族学・人類学がなぜ、社会科学といっしょで歴史といっしょじゃないのかという点ですが、これは、社会学と深いつながりがあるからです。

 

 医学は本来、独立させてもいいくらいですが、はっきり言って、これを独立させると10区分に入らないので、一番、近い自然科学に入ってます。もっとも、医学は、自然科学的側面だけではないですよね。

 

 一番不思議に思われるのは、家事が工学と同じ大分類ということです。家事は59で始まる番号ですが、2桁目が9になっているのは、ほかのものと性格の違うものが多いです。ただ、家事も科学的に扱うとまぎれもなく工学に一番近い分野です。

 

 7はちゃんぽんな感じでよくネタにされるのですが、ダンスなどは芸術とスポーツ、それから娯楽、芸事の側面全部持ってますね。

 

 分類の話は面白いので、また、掲載します。

 

図書館専門企画員 山重壮一