公共図書館のサービスは市町村立図書館のサービスが基本です。日本の法律では、公立図書館の設置は義務にはなっていませんが、市町村が行う標準的なサービスとして期待されています。
以前の地方自治法では、地方自治体が行う業務が例示されており、その中に図書館も入っていました。全国的に図書館が整備され、市町村が図書館を設置しサービスを提供することは普通であるという認識が広まったため、その条項はなくなりました。
しかし、このような全国の状況があるにも関わらず、高知県をはじめとして財政力のない地域では、いまだに公立図書館が設置されておらず、同じ国民でありながら、本を読んだり調べたりするという基本的な学習機会に差があります。
県立図書館は、図書館が設置されていない自治体、設置されていても蔵書が貧弱な自治体に対し補完的なサービスとして、図書の長期一括貸出しを宅配便を活用して行っています。
また、これとは別に、移動図書館による公民館図書室等への図書の貸出しも行っています。
図書館を設置している自治体に対しても、市町村民がリクエストした本がそこの図書館の蔵書にない場合、協力貸出し(はやい話が「また貸し」)をしています。
高知県の課題は、通常、市町村立図書館が持っているような一般的な本も、財政力が弱いため、県立図書館が貸さなければならないということです。そのため、高知県立図書館の図書費を増やしても、今度は専門書の方が十分に買えないという事態になります。
高知県全体での図書館振興が求められるところですが、残念ながら、日本の場合、公立図書館の継続的な事業に対する直接的な補助金等は基本的にありません。地方交付税は措置されていますが少額です。しかも、措置されている地方交付税も図書館に使っていない自治体が少なくありません。教育委員会予算のシーリングをこえてはならないということをかたくなに守っているため、義務的な費用の多い学校関係で予算が終わってしまい、図書館に人も金もあまりまわってこないのです。これは自治体自体の意識改革(これからの地方は国から金をもらって国のメニューによって事業をするというのではなく、自治体と住民自らが図書館のような豊富な知的情報資源を活用して地道に勉強・研究して地域にフィットした戦略を立てて実行していくことが必要という意識)がまだ十分でないことも考えられます。
高知県立図書館もただ本を市町村に貸しているだけでなく、このような意識も盛り上げていくことも合わせて進めていかなければなりません。
支援図書の書庫
このように基本的な児童書などは、本来は市町村でもっと買ってほしいところであるが、財政力が弱く、県立図書館がかなり貸している。
子ども時代から、吸収できる知識資源に差があるという問題は早期に解消しなければならない。
(山重壮一)