「読み聞かせ」について

 「読み聞かせ」とは、子ども(特に、文字がまだ読めない子ども)などに対し、絵本その他の本を読んで聞かせることを言います。

 お話をすることは、ストーリー・テリングといいますが、日本語で言えば、まさに「ものがたり」です。現在では、ストーリー・テリングというと、話を覚えて行う「素話し(すばなし)」を指すことが多いですが、もともとは、もっと広い考え方です。tellという英語が示すように「伝える」という口承文学(言い伝え)の基本でもあります。

 ブックトークという手法もあります。これも、その名のとおり、本について語ることですが、語り合うことまで含めて考えてよいでしょう。この場合は、たくさんの本を紹介する場合が多いです。たくさんの本を一定のテーマなどを設定し、紹介していきます。この中で、一部の本の中身を読んだりすることもあります。しかし、決まった方法があるというものでもなく、本について語るという「本を活かす方法」であり、多様なあり方が追求されてよいものです。興味・関心が多様になってくる年齢の高い子どもや生徒には特に有効と考えられますし、そもそも大人一般にも向いているものです(一杯やりながらのブックトークというものもオツなものです)。

 一方で、伝統的な「朗読」というものも大きな意味があります。フランスの高等学校「リセ」では、先生が生徒に朗読をするということもあるそうです。

 

 最近は、全国的に「読み聞かせ」などが盛んになり、各地で勉強会なども開かれるようになっています。高知県立図書館でも、市町村立図書館からの要請により「読み聞かせ」の講座に行っています。県立図書館が職員を講師として派遣する講座は、実際に読み聞かせを行う人に対するだけでなく、市町村で読み聞かせの指導を行う人に対する講座という意味も持っています。広い県内をすべて県立図書館で担当することは無理ですので、市町村においても、読み聞かせの指導者は必要です。

 

 ただし、「読み聞かせ」は非常に高度な技術を要するというものではありません。いや、むしろ、ちょっとしたコツをつかんで、家庭や地域で広く行ってほしいと思います。

 

 今回は、当館職員が市町村立図書館に派遣されて行った講義内容を参考に、若干、ポイントを拾ってみましょう。

 

1 読み聞かせの目的

 いやがるものを無理やり聴かせるというものではありません。「楽しむ」ということが大事です。お話自体が楽しく(又は、悲しくても感動するもの)、他の人と一緒に楽しめ、音としての言葉も楽しめるものが必要です。

 最後の部分ですが、手話による読み聞かせというものもあります。

 このようにして、本の楽しさを知ってもらうということが第一です。そして、自分では気づかない本も知ってもらう、自分から本を手にとって、自分で選び読書するようになってもらうということも大きな目的です。

 

2 読み聞かせはどんな本を選ぶかで成否が決まる

 相手が子どもの場合、次のことが大切です。

(1)物語の中に入り込んで楽しめる。

(2)発達段階に合っている

(3)長い間、子どもたちに愛されてきた本は強力(児童担当司書はこのような本を知っていますし、知らなければなりません)

(4)言葉が美しく、文章が生き生きとして力がある

(5)本を紹介した本やリストを参考にしてみる(図書館をどうぞご利用ください)

 

3 テクニック

(1)みんなに見えるように座る・立つ・・・本に光が反射して見えにくくならないように気をつけることなども必要です。

(2)ぐらぐらしないように安定した持ち方で本を持つ・・・楽譜の譜めくりのように2人1組で行う方法もあります。譜面台を使ったり机・椅子その他の台などを活用する方法もあります。

(3)本にある程度開きぐせをつけておくとやりやすい。

(4)はっきりと聞こえるように(小さな声で読む部分もはっきり聞こえるように)。小さすぎる声はダメだが大きな声であればいいというものではない。特別な場合除いて「もごもご」言わない(もごもご言う設定の場合は当然除く)。

(5)読む速さ、めくる速さを考える・・・一様にやるのではなくメリハリをつけるとよい。ページのめくり方もゆっくりめくるところ、素早くめくるところ、段階的にめくるところがある。

(6)リハーサルが大事・・・練習をしておいて、最低一回はリハーサルをして、他の人に見てもらっておくとうまくいきます。

(7)聞き手を無視せずに・・・話し手が主役のお芝居ではないです。聞き手の様子を見ながら心をこめて行いましょう。研究者の中には、「読み聞かせ」でなく「読みあい」と言う人もいます。一緒に読みあう気持ちが大切です。

 

 押しつけがましいものでない限り、子どもたちは寛容です。子どもたちと一緒に本を楽しみましょう。