高知県立図書館では、毎週金曜日の朝8時半から15分ほど、打ち合わせとミニ学習会を行っています。
図書館は夜、土日も開館しているので、職員が交替制勤務のため、全員がそろうのは毎月最終金曜日の閉館日だけなので、全体の会議・研修はこの日に行っています。
5月16日のミニ学習会では、高知県立図書館の昔の図書館報に掲載されていた海浜文庫について報告がありました。海水浴場に図書館が出張して、本を読めるようにしていたということです。
今も、海外などで同様の取り組みがなされています。日本では、現在ではあまり例がないと思います。
次のリンクはブルガリアでの取り組みです。
The Beach Library in Albena Resort, Bulgaria | Knowledgeable Ideas! ツ
観光客が来るところなので10か国語の本を用意しているようです。
高知県立図書館の昭和初期の海浜文庫についてのレポートを以下に掲げます。
過去の図書館報に見る県立図書館の取り組み
郷土書庫には戦前の県立図書館の図書館報も所蔵されている。
戦災で焼失して今は見ることのできない郷土資料の解説や、戦前の県立図書館の取り組みなどが紹介されている。
「海濱文庫」
県立図書館が昭和5年ころから始めたようで、期間は7月末~8月末までの夏季休暇の時期。
高知市種崎の千松公園(海水浴場)に「一個の組立書架と、三個の行李に詰められた二百餘冊の軽い読み物。軽便にして安易な折畳式安臥椅子二十脚。静座用の茣蓙十餘枚…」といった様子で開設していた。
「一度海水に浴して市塵を払い、起ちて陸上に上り、松籟颯々たる下に、臥榻に快心の書を手にして心境を養い懶夢を追う、蓋し避暑上乗の策か(館報52号)」という趣旨で行っていたようで、海水浴の間のヒマな時間を埋めるのに利用する人が多かったそうである。
例えば、昭和5年度の実績は以下の通り。
【期 間】 7月28日~8月31日
【閲覧者数】 3734人(1日平均約124名) 館報54号より
また翌6年には「八月に入ってより、天候も定まり入館者激増して座席に不足を告げるような盛況」となり、「開設以来8月7日迄17日間の入館者総数3672名一日平均216名」で、昨年度と比較すると「一日平均92名の増加」であったという(館報65号)。
その後もしばらく海濱文庫は続けられ、一日平均150名~200名ほどで推移していたようである。
なお、この文庫を担当する職員は当初1名のみで、夏期休暇返上で管理に当たっていたという。後に三里村の青年団や学生がボランティアとして手伝うなどしていたようである。
この海濱文庫の他にも、出前図書館のようなことも早くから行なっていたようである。
たとえば「防空展覧会」の会場で「陸海軍兵器及航空に関する図書」20余冊を展示したり(75号)、「紙業展覧会」の会場で製紙に関する図書20余冊を展示したりした(84号)事例が紹介されている。
<参考資料>
■『高知県立図書館報 大正15年~昭和9年』(2号~105号)
(高知県立図書館/編・発行 1926~1934年 資料コード:1103838650)
■『高知県立図書館報 昭和10年~昭和16年』(106号~183号)
(高知県立図書館/編・発行 1935~1941年 資料コード:1103838668)
■『高知県立図書館報 147~189号(昭和13年6月5日~昭和16年12月15日)』
(高知県立図書館/編・発行 1938~1941年 資料コード:1103842520)