考える力を育てる図書館利用

 4月23日は子ども読書の日です。このような日が制定された背景として、子どもの読書環境が十分整備されていないことや、子どもの読書について関心を持つ人が必ずしも多くないということがあります。

 

 変化の激しい現代の社会では、学校で教わる内容だけでは足りません。学校を卒業した後も、仕事に関すること、生活に関すること、新しい制度や技術など、学び続けていかなければ、社会に適応できません。

 

 このような時代に必要な本の読み方は、「クリティカル・リーディング」と呼ばれるものです。2003年にPISAショックというのがありました。PISAとはOECDが行っている国際的な学力調査で、日本の子どもの読解力は、「クリティカル・リーディング」の能力が低いということがわかりました。そもそもまったく回答できない子どももいました。

 

 「クリティカル・リーディング」とは、歴史学者が行う「文献批判」に発想としては近いものです。歴史学者は、本に書いてあるからといって、それが本当にあったとは判断しません。その本が書かれた状況や著者、その時代のものの考え方なども十分考慮し、さらに、他の本も比較し、その上、実際に土の中から掘り起こされた考古学的な証拠などを比較参照しながら考えを進めていきます。

 

 本を読むときには、書かれていることを鵜呑みにするのではなく、同じテーマの他の本も参考にし、実際に経験した人の話なども聴き、最終的には自分でよく考えることが必要です。

 

 こういう本の読み方をするのに図書館利用は最適の方法です。同じテーマの異なった内容・意見の本が図書館にはたくさんあります。個人でこれを買いそろえるのはなかなか大変です。

 

 子どものころから図書館を利用し、クリティカル・リーディングになれていれば、大人になっても詐欺にあったり、騙されたりせず、自分で学習し判断し、適切に人とコミュニケーションをとって助言をもらいながら、生きていく力が身につきます。

 

 子どもの幸せのためにも、ぜひ、図書館を活用してください。

 

※この件については、次のような本があります。

 

PISAに対応できる「国際的な読解力」を育てる新しい読書教育の方法 有元秀文著 少年写真新聞社 2009 1500円 (高知県立図書館分類 019.2アリ)